初の関西遠征観劇/「エリザベート」

久しぶりの関西遠征である。とはいえ、ふだんは遊びに行くところ。観劇のために行くのは初めてである。メインは、ミュージカル「エリザベート」。しかも、ダブルキャストで昼と夜の部があるのだが、1日に両方見てしまおうという、贅沢なんだがお馬鹿なんだか俄かには判断しかねる暴挙に出るのだ。暴挙と書く時点で、お馬鹿と自覚しているような気がするが。


普通なら新幹線で行くところ、一緒に行く友人が飛行機のチケットを安く用意してくれたので、朝から一路羽田に向かう。飛び立ってしまえば、伊丹空港まで1時間もかからない。なんと便利なことだろう。味気ないと言えばそれまでだが。


現地でさらに友人と合流し、梅田コマ劇場で向かう。「エリザベート」の主役は一路真輝演じるエリザベートなのだが、その主役を食うばかりに目立つのが死神役トート閣下。これがダブルキャストで、昼の部は山口祐一郎(通称祐さま)、夜の部は内野聖陽(通称ウッチー)。前者は明日が千秋楽、後者は今日が千秋楽。祐さまのトートは数え切れないほど見たが、ウッチーのは初めてである。祐様は歌で、ウッチーは演技で勝負といったところか。


祐さま、楽を間近に控え絶好調。見せ場の曲「最後のダンス」で、スピーカーが壊れるんではないかと思うほどのバズーカボイス。これまで見た中で、ダントツのバズーカの威力であった。ひょっとしたら、あそこまでの歌声は、二度と聞けないかもしれない。


それに対してウッチー、さすが文学座出身、繊細な演技で観客を魅了する。2002年の公演のときは歌がいまいちだったらしいが、今回はそんなこともなく、祐さまとは別路線でロックのテイストを取り込んだ、独自のトート閣下を作り出していた。ルドルフ役の浦井君との「闇が広がる」は、その美しさに思わず見とれてしまったほど。そのうち彼の舞台を見に行こう、そう強く思った。


ところで、東京ではミュージカルにおばちゃんが行くとなると、少しハイソなイメージが漂うが、さすが大阪は違う。隣の席に座ったおばちゃんが自分の目の前を通っていくとき、シャツが小さいからかおなか丸出しで過ぎていく様を見たとき、あまりの出来事に開いた口が塞がらなかった。よくも悪くも、これが大阪のおばちゃんだ、と思った。