予感的中でびっくり/「星新一ショートショート」
この春からNHKで始まった新番組。星新一ファンにはたまらない10分間、3本のオムニバス。
今夜会社から家に帰ってくる電車のなかで、そういえば月曜日だ。今日は何の作品が放送されるのかな? と想像していました。そして、なんとなく好きな作品の一つである「生活維持省」が頭に浮かびました。あの残酷ななかに爽快感溢れる作品をアニメにしたら、どんな感じになるのかな、と。
そしてそして、偶然にもほどがあるのですが、なんと今日放送されたのはまさに「生活維持省」。タイトルが出た瞬間に、チョーびっくりしてテレビに向かって思わず声をあげてしまうほど。
イメージしていた絵柄とは違ったけれど、これはこれでよし。爽快感、抜群。この混乱の世の中を救う唯一の解決策は、本当に生活維持省を作ることなのかもしれないですよ。
- 作者: 星新一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1971/05/25
- メディア: 文庫
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もう一つ、いつか放送してほしいと願っているのは「処刑」。これは10分の尺には収まりきらないかもしれません。ああ、でも見てみたい。
- 作者: 星新一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1972/06/19
- メディア: 文庫
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無理だ!その歌を使うんかいな/KIRIN「FIRE」
大泉洋をメインキャラクターに、いままでの正統派マジメ路線から一転、コミカル路線に切り替えたKIRIN「FIRE」のCM。路線変更はいいんですが、びっくりしたのは大泉君が歌うそのCMソング。
「挽きたて〜、挽きたて〜」
って歌詞は替え歌だけど、そのメロディーは爆風スランプの「無理だ!」じゃないですか。いまどきの人はこんな歌知らないだろうな〜(*1)と思ってみたものの、それ以上に下手をするとこの曲が流行っていた世代の人たちでも、知らない曲である(*2)可能性が高いんではなかろうか。
最近、昔の曲がやたらCMに使われてます(*3)けど、いまの人たちはこういうのを聞いて「おっ、新しい曲だな」とか思うんですかねえ。質問してみたいものです。
ちなみに「挽きたて〜、挽きたて〜」の本当の歌詞は、「腕立て〜、腕立て〜」です。そのあとには、「無理だ!象の腕立て〜〜伏せ!」と続きます。むちゃむちゃコミカルソングなのです。ああ、歌いたくなってきたぞ。
- アーティスト: 爆風スランプ,サンプラザ中野,川島銀次,井上鑑,中崎英也,ファンキー末吉,久米大作,中村哲,エンペラー福田,竹中尚人,新田一郎
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 1994/10/06
- メディア: CD
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風洪&白圭が繰り広げるスペクタクルロマン/「孟嘗君」宮城谷正光
- 作者: 宮城谷昌光
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三国志すら読んだことがない自分ですが、知り合いにすすめられて宮城谷センセイの「孟嘗君」を読んでみました。文庫で全5巻はなかなかの分量です。読書家なわけではないので、結構時間がかかりました。いや、最後の2冊がかかったというのが本当は正しい。
なぜかというと、4〜5巻はかなりつまんないんです。とくに5巻はペースが落ちました。逆に言うと、1〜3巻は猛烈な勢いで読破。ここでの主人公はタイトルロールの孟嘗君(田文)ではなくて、明らかに父の風洪、のちの白圭です。その活躍ぶりは、まさに筆が踊るがごとし。宮城谷センセイもあとがきにこんなことを書いています。
主役のかたわらにいる人物に大いに惹かれるという心の癖はむかしからあり、ここでもそれがでたので、一年から一年半でおわる予定が狂い、二年半も書きつづけてしまった。白圭の魅力に抗しきれなかったあかしである。
そうなんですか、昔からのクセだったんですか。とても納得いたしました。
白圭が一線を退いてからはようやく田文が主役になりましたが、センセイの筆はすっかりおとなしくなりました。こちらもちんたら読んでましたが、それでもときどきセンセイが主人公に語らせるフレーズに心惹かれるものあり。とくに気になったやつを書き留めておきます。
人のいのちは、すでにあるものを守ってゆくというようなものではない。日々つくってゆくものだ。今日つくったいのちも明日にはこわれる。それゆえ、いのちは日々産みだすものであろう。
ふむふむ。人間というのは、日々生まれ変わる生きものなのですね。大賛成。
宮城谷センセイの作品は、なんというか男のロマンとでもいいますか、登場人物の描かれ方が男のナルシシズムを刺激するとでもいいますか、きっと女性向きではないと思います。だからなんとなく宮城谷「センセイ」と呼んでしまいたくなるのです。この感覚、伝わるかな。
美波の女優魂炸裂、蜷川幸雄の演出魂は爆裂/「エレンディラ」
さいたま芸術劇場は、埼京線与野本町から徒歩7分。でも、この真夏の炎天下を歩くのは、7分が10分にも20分に感じられます。午後12時半開場の少し前に到着。ここには初めて来たので、施設内を探検。そしたら、1階の広場みたいなところで、サックス・スーザフォン・ピアノ・パーカッションの楽団が演奏してました。その素敵な響きにしばし耳を傾けていたら、彼らは演奏しながら上の階へ移動していきました。
自分はトイレを済ませてから、劇場大ホールへいざ出陣。上演時間はなんと4時間10分(*1)。途中の休憩は15分と10分なので、トイレは早めに確保しましょう。
「エレンディラ」は、コロンビア出身のノーベル賞作家ガルシア=マルケスの原作を、坂手洋二が戯曲化、蜷川幸雄が演出した作品。会場となった大ホールは、なかなかいい雰囲気のハコでした。座席側は傾斜がほどよく、どの席からも舞台をしっかり見渡せます。ちょっと目の前がスモークで見えにくいのが気になったけど。
オープニングに流れるマイケル・ナイマンの手によるテーマ曲は一発で気に入ってしまった。砂漠の荒涼とした雰囲気を醸し出していて、この作品にぴったり。ありがちなコード進行と思わせておいて、ちょっとずれてる。その後何度も劇中に登場し、頭から離れない。うーん、CDがほしい。
以下ネタばれありまくりです。
続きを読む朝7時から酒場での鼎談を流すのってば/「ボクらの時代」
音楽家:坂本龍一、作家:村上龍、幻冬舎社長:見城徹。この、一見関係ありそうでなさそうで、もう一回りして関係ありそうな3人。教授と村上龍が昔から仲が良いのは知っていたけど、そこに編集者見城さんがどう関わりがあるのかと思えば、そりゃ作家と編集者なんだから関係大ありなわけで。じつは、教授と見城さんも昔からの知り合いなんだとか。へ〜、そうなんだ。
家族のこと、仕事のこと、などなどをとりとめもなく3人で語る。司会はいない。そして、誰かが場を仕切るわけでもなく、ほんと思いつくままに語っている感じ。30分では物足りない、1時間くらいの番組にしてほしかったですね。雑誌の企画だったら、もっと違ったものになったかも? 教授の父親が、三島由紀夫も担当したことのある編集者だったというのは初耳でした。
あと、教授のいまの目標が「まあぼくはほとんど子供のために生きているようなもんだね」っていうのには笑った。4人子供がいて、そのうち3人は坂本龍一全盛時代に生まれているので、まったく父親らしいことをしてこなかったそうな。そんな人が、なぜ突然子供を中心に考えるようになったのか。不思議。
しかし、久しぶりに動く教授を見ましたが、いくつになっても存在感ありますねー。カリスマ的オーラが出てる。このメンバーなら、3人が3人とも主役級ですが、そのなかでも抜きん出ていました。昔からファンだというひいき目のせいかもしれないけど。
3人が昔からなじみのバーで収録していたのですが、この番組は日曜朝7時〜7時半の放送なんです。ということは、放送時間と番組の雰囲気があまりにもアンマッチ。ま、たまたまこのメンバーだったから舞台が酒場になったようで(出演者が指定するらしい)、それはそれで納得。アウトドアなんてイメージじゃないしね。
この番組、今年の4月から放送しているそうで、過去の出演者を見るとなかなか面白い。第2回の放送(高田純次、ベンガル、柄本明)は見たかったなあ。
豪華なキャストだけど何かずれてる/「図鑑に載ってない虫」
以前ネットで見つけて、なんとなく気にはなっていたけれどとくに行動には移してなくて、今日突然見ておかねば!と思い立って映画館に足を運んでみました。監督が「時効警察」の脚本・演出をしていた三木聡というのと、岩松了やふせえりといった時効警察コンビが出演しているのと、松尾スズキの演技を1度見てみたいな*1、というところがポイントでした。ところがところが・・・。
つまんなかったですねえ。コメディーだっていうから大笑いを期待していったのにもかかわらず、ほとんど笑えなかった。途中、眠気が襲ってきて、目が覚めたらそれまで出てなかった役の人(たぶん松重豊)が出ていて、10分くらい気を失っていたと思われ。そのなかでも、菊地凛子の役はちょっと笑ったかな。あとちょい役の片桐はいりが存在感ありまくり。
役者はみな上手だし、そもそも豪華出演者だし、そこに不満はないです。何がどうつまんなかったかは自分でもよくわからないのですが、演出がスベってたのかも。ちょっとした違いでかなり面白くなる感じはします。それだけにもったいない。
三木監督はすでに次回作の公開が11月に控えている模様。主演はオダギリジョーで、こっちは期待できそう。しかし、このヅラは強烈。予告を見ていて、コンビを組んでいる役者が、まったく誰かわかりませんでした。
ちなみにWikiを見ていて、三木監督の奥さんがふせえりだということを初めて知りましたよ。へえ〜×5。
*1:じつは舞台にしろ映画にしろ、松尾さんの姿を見たことがなかったのです。
かなりヤバい、涙なくしては読めません/「毎日かあさん4」西原理恵子
最初、こどもたちにまつわる笑い話の4コマが、これでもかと続きます。真ん中くらいで、サイバラさんの元夫の鴨ちゃんが精神病院から退院してきて、改めて家族4人で暮らし始め、そして夫婦ふたりで取材したカンボジア旅行記から、ひとつの物語の終焉へ。
合間に挟まれる書き下ろしの「鴨ちゃんとワタクシ」的な語りが、とにかく胸に響きます。自分は2人のアマゾンでの出会い(*1)から鴨ちゃんの闘病生活(*2)までが頭に入っているので、すべの話がリンクしてしまい、最後は結末を知っていてなお、マジ泣きそうになりました(バスで読んでいたのでなんとかこらえました)。
知り合いから借りて読んだけれど、これは蔵書にすべき。改めて買いなおします。
サイバラさんと鴨ちゃんの子どもたちが大きくなったとき、この本を読んでどんなことを感じるんだろう。家族の姿をこんなすばらしい作品に残せるサイバラさんを、ちょっとうらやましく思います。
- 作者: 西原理恵子
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2007/07/25
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