芸達者によるミュージカル/「ラ・マンチャの男」

大阪では「モーツァルト!」で盛り上がっているが、東京も負けてはいない。松本幸四郎が30年以上演じつづけているあたり役、「ラ・マンチャの男」の公演が始まったのだ。いままで、その名を聞いたことは何度もあるけれど、そもそもミュージカルに興味がなかったので、観る機会はまったくなかった。ところが、いまは立派なミュージカルファンに育ったので(笑)、ここはこの有名な作品を観ておいてもいい頃だ、そう思ったのである。幸四郎は「王様のレストラン」以来のファン。とはいっても観たことがあるのは、三谷舞台の「マトリョーシカ」だけで、歌舞伎はいまだに機会に恵まれない。こちらも一度観てみたいものである。


観た感想としては、これはいわゆるミュージカルではない、ということである。「レミゼ」とか「エリザ」とか「モーツァルト!」とかは、れっきとした(?)ミュージカル。歌は確かに上手いが、芝居は下手だ。


それに対して、ラマンチャは芸達者な役者が多くて、芝居がしっかりしてる。幸四郎の芝居は、ほんのちょっとした仕草やセリフでも、帝国劇場全体に届いてしまう。自然にやっているようでいて、すべて計算し尽くしているのだろう。すごい!、と思った。
その分、歌はまあまあといったところ。もちろん上手いのだけど、ミュージカル専門の人に比べたら、さすがに幸四郎の歌は「ふうん」という感じ。とはいえ、歌の専門ではないのに、ちゃんと心に響く歌を聴かせるのはさすがである。


芝居が上手いと、舞台を安心して観ていられる。すると、芝居に集中することができる。このところ、ミュージカルをたくさん観過ぎていたせいか、良い芝居を観る回数が減っていたようだ。良い芝居を観ることがどれだけ大事なことか、このところ再認識している。


一つびっくりしたこと。ラマンチャでもなんと「あるある探検隊」のフリが出現したのだ。この舞台の演出は幸四郎である。勘三郎の影響を受けたのだろうか。正しくは野田秀樹の、ということかもしれないが。