テーマと劇団の特性のバランス/「ニライカナイ錬金王伝説」スーパーエキセントリックシアター


昨年に続いて、SETの本公演を観劇。今回はミュージカル・アクション・ウチナンチュウ・コメディーと銘打って、沖縄をテーマに取り上げた。音楽はBEGINが担当。


ハコは、東京芸術劇場中ホール。友人がチケットを取ってくれたのだが、長年SETのファンクラブに入っている関係か、座席はなんと最前列。まさに目の前で役者を見ることができる。ただし一番右端の席だったので、首をずっと左に向けていなければならず、それはさすがに疲れた。でも、座席位置が位置だけに、舞台袖は丸見え。出番待ちの役者の姿がときどき見えたりして、次はあの人が出てくるのだな、とちょっとだけ舞台を先取りした気分になる。


小倉久寛は、舞台に現れるだけで客席から笑いが起こる。経済学者の役だが、相変わらずヌボーっとした風貌と動き。これが笑いを誘う。計算してやってるんだか地でやってるんだか、よくわからない。
永田耕一がおいしい役。「お代官さまあ〜」のセリフだけで笑いが取れる役というのも、そうそうないだろう。岩永新悟とコンビを組んでいたが、お似合いのお二人であった。
三宅裕司の出番はけっこう後だった。でも、舞台に現れたからといって歓声が起こるわけでもなく、淡々と芝居は進んでいく。


恒例の三宅・小倉コンビのアドリブコントは、テンポが悪く、いまいち流れに乗り切れなかった印象。彼らは演技のツボは押さえているが、どうも上手いという感じはしない。とくに三宅は、手を抜いているのではと思わせられる。よほど中堅や若手の方が、見ていて安心できる。


舞台前半は芝居中心で、はっきりいって退屈だった。この劇団の良さは、動きがあってこそ。後半はアクションが入ったり、出し物があったりで、ようやくワクワク感が。そのなかでも、沖縄空手はとてもきれいだった。10人くらいのメンバーが、お揃いの白い道着を身につけ、かけ声とともに型を披露する。全員の動きもピタリと合い、相当練習したことをうかがわせる。こういうところにものすごいエネルギーを注ぎ込むのが、この劇団の特徴である。


野添義弘が頑張っていた。47歳だというのに、アクションでかなりいい動き。笑いのツボを心得た芝居をするし、ほんとにいい役者だと思う。この公演が終わると、すぐ次に「椅子の上の猫」という舞台への出演がある。これは以前から気になっているのだが、いよいよ見に行きたいという思いが強くなった。


カーテンコールでは小倉に語らせる三宅。アドリブがからきしダメな小倉は、いつもはまわりに突っ込みを入れてもらってなんとか凌いでいるが、今回は誰も助け舟を出さずに放置プレイ。見ていて痛々しいほど。
2度目のカーテンコールでは、「お代官さま」が再登場。子役たちにもやらせて、永田さん大活躍。いや、出番は多くなかったから、中活躍といったところか。でも、存在感はかなり大だった。


総評としては、全体的なバランスがいまいち。前半にアクションをもうちょっと配してくれないと、飽きてしまう。ただ、演出に苦心しているのはよくわかった。ミュージカルアクションコメディーを前面に押し出せるようなストーリーではなかったので、それが原因ではなかろうか。となると、選んだテーマそのものがいまいちだった、ということになるのかもしれない。