狙いどおり、いや予想以上に面白かった!/「椅子の上の猫」


この公演は、初めて告知を見たときからとても気になっていた。申し訳ないけど、主演の二人に興味はなかった。問題はその脇を固めるメンバーだ。
特に、深沢敦と野添義弘の両氏である。それに今拓哉。この三人がゲイの役をやるのだという。とにかく深沢さんと野添さんの掛け合いが見てみたかった。それと今さんのゲイ姿がどうなるのかもちょっと興味があった。前者二人の姿は容易に想像できたので、その点では興味がなかった(笑)。


しかし、公演期間が11/10〜14と短くてチケット発売時点では行けるかどうかがわからなかったのと、まあ売り切れることもないのではないかという希望的観測をもって、とりあえず放置していた。そのままずっと行くかどうか悩んでいたのだが、11/5に見たSETの舞台での野添さんの活躍ぶりを見て、やはりこっちも見ておきたい!と思い直したのである。深沢さんは花組芝居在籍中にNACK5でラジオ番組を聞いたことがあり、存在は知っていた。あれが20年まえのことなので、もうかなりゲイ歴、もとい芸歴は長いのだが、いままで生の姿を見たことがなかった。「はるか17」でその存在感を遺憾なく発揮していたのがきっかけで、これは一度見ておかねば!と、とても興味が沸いたのである。
今さんは、この春にレミゼでジャベール役を見た。あのときの印象は強かったわけではないが、歌がうまいなあと思ったのは確かである。ジャベールがおかまとは、演技力を問われる役だけに、真価も問われる。


幸運にも、金曜日に客先直帰ができる状況になったので、当日券があるか劇場に確認してから、新宿歌舞伎町のシアターアプルへ向かった。予想通りチケットはそこそこ余っている。しかも、真ん中より少し左寄りの、それほど悪くない席に座ることができた。
会場は妙齢の女性が多い。この人たちが深沢さん、野添さんを見に来ているとは思えないので、きっと主演のどちらかがお目当てなのだろう。あるいは、大浦みずきさん狙いかもしれない。
公演時間はどれくらいなのかを確認すると、「前半50分、休憩20分、後半1時間」といった張り紙がある。これはかなり異様な感じがした。ふつう、2時間の舞台だったら休憩はなしだろう。なのに20分とはこれ如何に。その理由は、あとになってわかった。


1幕の冒頭シーンから、「マダムG」のおかま三人組登場。深沢さんは素のままだが(笑)、野添さんは男くささがばっちり残るおかまという感じ。今ジャベはタカビーな役なのだが、これがめちゃめちゃ似合ってる。そもそも顔がきれいだし、足もきれいだし、思わずファンになってしまいそう(爆)。こんなやつ、本当に2丁目のどこか店で見たことがある気がする。


大浦さんはとにかくうまかった。そして、舞台に立てばいつでも抜群の存在感。いまは女を捨てたと言っておきながら、どことなく哀愁を漂わせるところに、演技力をみた。
冨田真之介くん、この濃いメンバーのなかで、それなりに存在感をアピールしていた。舞台上でタオルを巻いてはいるが、すっぽんぽんになるシーンまであったりする。果たして橋田ファミリーの許可は得ての出演なのだろうか。老婆心ながら、心配をしてしまった。しかし、「くん」付けで呼びたくなるくらい、若々しい雰囲気なのだが、調べてみるともう20歳なのだった。「さん」付けで呼ばなきゃいけない年頃か。
もうひとり、マダムGのお客役で、名前の出てない俳優がいた。結構うまかったのだが、あれは誰だったのだろう(その後、入澤正明という名前の俳優さんであることが判明)。


2幕、おかまショーが最高!衣装をド派手にして、踊りもありありで、本当に2丁目に来た気分。ここは1丁目だから、ほとんど似たような場所であることには違いないが、それにしても笑いっぱなしだった。このセッティングがあったので、休憩時間20分が必要だったのだろう。お客さんのなかには、どう対応していいかわからず黙って見ているひともいたが、こういうときは手拍子で役者をのせるのが観客の役目だと思うのだが。


深沢さん、その容姿といい、演技力といい、存在感ありすぎ。彼のハリのある声がそれを引き立てているのだと思った。さすがボイストレーナー
野添さん、SET本公演とかけもちで稽古が大変だっただろう。まさか1週間で2度もお目にかかることになるとは。お疲れさまでした。
今さん、ショーのなかで出てくるレイザーラモンHG姿、頑張っているのは伝わってきたけど、なりきりぶりが足りずにいまいち笑えませんでした(正直なところ、ちょっと痛かった)。愛ちゃん役はあんなに板についているのに、不思議。


主役を楽しみに見に来たお客さんにとっては、かなり予想外の内容で、つまらなかったに違いない。舞台というのは、やっぱり行ってみなけりゃわからない。さんざん悩んだ挙句にこういう当たりクジを引くと、とても得した気分である。大満足の夜だった