いまの教育に足りないものとは/世界一受けたい授業!!


テレビをつけたら、たまたま「世界一受けたい授業」をやっていて、その1時限めに、サイエンスプロデューサー・米村でんじろうが出演していた。以前にもテレビで米村さんの実験を見たことはあったが、今回の一つに思わず感動してしまった。


その実験は、マシュマロを45度くらいの角度をつけたロケットから発射し、椅子に座っているくりぃむしちゅー有田が口を開けっぱなしで待っていて、その口にダイレクトキャッチさせるというもの。狙いすましたように届いたマシュマロに有田は大喜び。なんどやっても、バッチリ届く。そのたびに、有田はびっくりしながら大はしゃぎ。


「すげー・・・」


思わずため息がもれた。これはニュートン運動方程式の実験なのだ。


初速と方向が決まっていれば、物体は同じ軌道を描いて動く。この事実を、世の中の人はどれだけ知っているだろうか。有田が座ったところは、ロケットからマシュマロを発射したらちょうど届く位置になるようにと、事前に計算されていたのだ。なんどやってもぴったり届いたマシュマロが、それを証明している。


ニュートン運動方程式と聞くと、ギョっとする人が多いかもしれない。でも、こんな楽しいアレンジで見せられると、なんであんな正確に届くんだろう、と興味を持つ人が増えるだろう。さらに、どういう計算をしたら届く場所がわかるの?、という疑問が沸けば、もうあなたは物理学のトリコである(笑)。


でも、このマシュマロの実験なしで、いきなり「ニュートン運動方程式の勉強をしましょう」と言われて、かつかつと黒板にこんな式を書かれたら、お先真っ暗でげんなりしてしまうに違いない。


 m\frac{d^2r}{dt^2}=F


ね、いまそこで目をそむけたアナタ、アナタですよ(笑)。


そういう人でも、米村さんの実験なら目をそむけることなんてない。彼の実験ですごいなと思ったのは、そういうみんなを引き込む力である。興味を持たせるワザと言ってもいいかもしれない。そしてこのワザは、ふだん学校の勉強では見られないものだ。いわゆる「エンターテイメント」である。そう、学校の勉強に足りないのは、エンターテイメントなのだ。


じゃあ、学校の先生がみんなエンターテイメントを勉強すればいいじゃん、って思うかもしれないけれど、これがそんなに簡単ではない。そもそもエンターテイメントとは、周到な準備とテクニックがあってこそ成り立つものなのだ。はっきりいえば、人を楽しませるには才能が必要なのである。世の中、そんな人は一握りだ。


それにしても、米村さんは若い。1955年生まれだというから、じつはもう50歳をすぎているのだが、とてもそうは見えない。実験を完成させるにはいろいろ苦労も多いだろうに、これだけ若々しくいられるのはなぜだろう。こどもたちに夢を与えている喜びか、はたまた自分のやりたいことを思う存分やっているからか。


いつか教育と関わってみたい自分としては、ちょっとうらやましい。