ハッピーミュージカルはいいもんだ!/「ミー&マイガール」


2ヶ月の改装期間を終え、新装開店となった帝国劇場で「ミー&マイガール」を観てきました。


演出:山田和也さんのブログ(http://showgoeson.cocolog-nifty.com/show_goes_on_/)を読んでいて、開演前から何か企み(?)があるんだろうと思っていましたが、果たして6:30開演の劇場に6:00に到着、ロビーでふらふらしながらスタンバイ。何が起きるのか楽しみに10分くらい待っていると、突然指揮者の塩田さんが目の前を横切る。「お!?」と思って後ろを見ると、オケの人たちが3人あとに続く。塩田さん、2階客席への階段に陣取り、おもむろにマイクを握りしめる。いよいよトークショーのはじまりはじまり(笑)。オケで使っている楽器について、笑いをまじえて解説してくれました。


そのあとはアンサンブルの俳優さんたちが乱入して、こんどはランベスウオークの踊りの練習。これ、こわ楽しい。まわりの人たちのノリを観ながら、こわごわ手を突き上げて「HEY!」。日本人は恥ずかしがり屋だから一人じゃできないけど、みんながやるなら怖くない(?)。気がつくとさっきの3人以外のオケの人たちもロビーに来ていて、そのまま客席を通ってピットへ入っていきました。いやいや、なんとも斬新な演出。こりゃ、山田さん塩田さんコンビでなければできないでしょう。


本日は2階席前から2列目での観劇。さて、まずは1幕。井上君、ダンス上手くなったかも。モーツァルト!のときより、動きにキレがある。タップもしっかりみせてくれました。それから、マジックや帽子の小技をいろいろ繰り出してくれる。きっとかなり練習したんだろうなあ。歌は相変わらず聞かせてくれます。1幕最後のランベスウォークから舞台は大盛り上がり、そのまま休憩へ。


2幕は場があったまったせいもあって、たっぷり楽しめた。途中小ネタ多し。「noblesse oblige」の看板(?)がかかる歴代当主のまえで繰り広げられるビルとサリーの掛け合いシーンは見物。井上君、ノリつっこみしまくりです。もともとテレビに出演したときのトークを見ていても、お笑いはいけるなと思っていたんで、きっと得意なんでしょう。レミゼのコゼットネタでは大笑いしてしまった。


ビルとサリーが再開するハッピーエンドのシーンは思わずホロリ。このふたり、魅せるなあ!


最初から飛ばしっぱなしの踊るコンダクター塩田さん、2幕最後には指揮台から降りちゃって、代わりに井上君や村井さんが登っちゃう! その間もオケは演奏し続けているので、指揮者ってじつは必要ないんじゃないの?と思うことしばしばでした。最後のカーテンコールが終わったあと、オケの演奏と塩田さんの弾けっぷりをみんな席に残って観ていて、すべての演奏が終わったときに会場から拍手が沸き起こったのには、なぜだかジーンと来てしまいました。


東宝ミュージカルというとなぜか悲しいお話が多いのだけど、こういう楽しいミュージカルがもっとあってもいいんじゃなかろうか。それから、同じく東宝ミュージカルというとオケ鳴りっ放しの歌中心演目が多いけど、この作品はミュージカルとストレートプレイが混ざっている。ストレートプレイも好きな自分としては、1粒で2度おいしい感じ。


脇役の方々も充実です。

  • 純名ジャッキーはエロかわいかったです。ビルを誘惑するさまは、ついついオペラグラスで食い入るように観てしまった(爆)。
  • 涼風マリアは、厳格なキャラから突然ぶっ飛びキャラになる変わり身がすごかった。最初、かなり抑えた役だったからか涼風さんが演じてるってわからなくて、誰だのあの上手い人は?なんて悠長に見ていたのだから、お馬鹿な自分。
  • 村井ジョンは、もうすっかり安心して観ていられます。お笑いキャラも上手。さすが。
  • そのほか、ジャスパー卿や執事チャールズや弁護士パーチェスターといったバイプレーヤーたちのキャラがはっきりしていて、しかも出番がかなりあって面白い。こんなに脇が目立つミュージカルってのも初めて見た気がする。


いくつか気になったところ。1幕は全体的に流れが乗り切れない感じでした。みんなソツなくこなしているんだけど、何かが足りない。井上君はすごい色んな新しいことをできるようになっていて、すごく努力したんだろうなって想像できるんだけど、なんかその努力が報われないというか、舞台全体の盛り上がりにつながらない。なぜなんだろう。まだこなれてないのかな。


それから、ビルとサリーの気持ちの揺れ動きが、いまいちはっきりわからない。なので、展開がときどき唐突に思える。あれ、まだビルはサリーのこと想ってたの?って感じ。ビルがサリーに寄せる気持ちがいまいち伝わってこないし、サリーもあっさりビルをあきらめるようにも見えたりした。ビルがジャッキーの誘惑に負けずにサリーを想い続ける様子も、いまいち伝わってこない。ここは演出の問題なのかなあ。


とはいえ、ノリノリの舞台を見終わって、とてもハッピーな気分になって帰途につけました。もうちょっと舞台がこなれてきたら、全体の流れが渦を巻くように開演前の講座から1幕・2幕とよどみなく進んで、感動のフィナーレとなだれ込みそうな気がします。そうなっているか確認するために、もう1回観に行っちゃおうかな。


このミュージカルは宝塚では人気演目で、涼風マリアとか、久世星佳・バルトシュッテッテン男爵夫人(おい)とか、天海祐希・阿久津真矢先生(おいおい)とかがビルを演じていたのですね。あとから調べて初めて知りました。そうだったのか。


ところで、帝国劇場はどこが改装されたか全然わかりませんでした。鈍感な自分・・・。

ビル 井上芳雄
サリー 笹本玲奈
ジャッキー 純名りさ
マリア公爵夫人 涼風真世
ジョン卿 村井国夫
パーチェスター 武岡淳一
チャールズ 丸山博一
ジャスパー卿 花房徹
演出 山田和也
指揮 塩田明弘