[ミュージカル] 歌・芝居・ダンスの3拍子揃った大満足のコメディー/「ダンス オブ ヴァンパイア」


帝国劇場ダンスオブヴァンパイヤの初日を観てきました。歌と芝居とダンスがみごとに融合した、すばらしい舞台。もう言うことありません。大満足です。


もちろん山口祐一郎様(以下、祐様)を目当てに行ったのですが、今回の出演者はみんなすごいすごい!


個人的には、アルフレートの泉見さんがすごくよかった。歌もうまいけど、演技がすごくいい。一番最初の登場シーンから、がっつり掴まれてしまいました。おずおずとしているアルフレートの情けなさが、よく伝わってくるし、ほんと言うことなし!


市村さんは相変わらずの芸達者ぶり。早口言葉の歌はすごいです! あの歌詞を間違えずにあのスピードで、しかもちゃんと滑舌よく聞こえるのがすごい。しかも、その合間に演技もしてる! もう、なんなんでしょうこの人、って感じ。


剣持さんのサラは、ダンスがきれいだったかな。バレエをやってたっぽい動きでした。歌も透き通るようでした。もうちょっとやんちゃさがあってもいいかなー?


駒田さんのせむし男。すごい存在感。セリフなんて一言もなかった気がするけど、体だけですべてを表現できるだなんて、もう。ほんとこの人が出てくると、そのまわりの空気が変わってしまう。


佐藤正宏さん、レミゼだと下手だなあと思っちゃうけど、今回は芝居部分が多いので歌があまり気になりません。っていうか、やっぱり芝居はうまい。


阿知波さん、うまいんです。うまいんですけど、今回はまわりのメンバーが強力すぎて、霞んでました・・・。


宮本裕子さん。今回のメンバーのなかでは唯一といっていい、東宝ミュージカルにほとんど顔が出てないメンバー。セクシーでした。


そしてそして、あのシカネーダー、もとい(笑)、ヘルベルトの吉野さん。出演シーンは少ししかないのに、大爆笑させてもらいました。思い出しただけで一人笑いできます(笑)。そもそも、祐様と親子というだけでも十分な設定なんだけど、ここまで笑えるのは、歌がしっかり歌えて、ダンスがしっかり踊れて、なおかつ筋肉がしっかりしているからです(爆)。必見。


お父様である祐様も黙っていません。お風呂場のサラを襲うときの登場の仕方は、もう突拍子もなさすぎて・・・。 それでも何のブレもなくちゃんと歌いきるところが 、さすがプロです(笑)。パンフによると、このシーンのプランを山田さんから示されたとき、祐様は「いいね、いいね!」とお喜びになられたのだそうです。その様子が容易に想像できます・・・。


歌はいつもどおり、いや、いつも以上に申し分ありません。曲調はいままでにない新境地を感じさせます。なんと表現すればいいんだろう。ちょっと演歌入ってるけど、かといってエリザやモーツァルトとはちょっと違う、何かが新しい。伸びと艶のある声はまったくもって健在。


祐様の役どころは友人曰く、「怪人のヒネクレ根性を少し素直にして、トート閣下より大人のゆとりを持たせた、お茶目な乗り物に乗ってる伯爵様」って感じだとか。まったくもってその通りで、言い得て妙です。さらにこの親子をたとえて、「祐様は怪しく、吉野さんは妖しい」と。これまた的確な表現。百聞は一見に如かず。


あと、最後の垂れ幕も必見です(まあ、いやでも目に入りますが)。大笑いのうちにカーテンコールです。今日は演出の山田和也さんの紹介で、ミヒャエル・クンツェさんがコメントしてました(ちょっと長かった)。山田さんは自身のブログで今回の舞台について、「大変な難産であったが、親の心配をよそに、生まれた子はとても元気な子であった」と書いてます。舞台は、難産をまったく感じさせない出来栄え。歌と笑いを融合させる、山田さん会心の作品に育つのではないでしょうか。ミーマイから連続2ヶ月という稽古も大変だったでしょうが、しばらく休めるといいですね。


それにしても・・・。このミュージカルはコメディーなのです。なんの思想性もない、純粋に馬鹿馬鹿しいコメディーなのです。やっぱり祐様にはこういうのが似合っていると思う。マジメなのが似合わないというんじゃないけど、こういう自由におちゃめに、でもときどきまじめに、さいごはオバカに、そういうのが似合うのだと思うのです。コロレド猊下を演じているとき、そのあふれんばかりの想いが噴出していましたが(爆)、それがまさに昇華した感じです。いや、今回は自ら道化となるシーンがあるわけじゃない。まじめにやればやるほど笑えてしまうシーンが満載なのだ。好きだ、好きなんだあああ!


アンサンブルの砂川直人さんが、残念ながら怪我で出演できないとのこと。楽しみにしていたので、かなり残念。でも、どこが砂川さんの出番(どこかわからないけど)で穴が空いている感じは全然なかったので、それはそれで微妙だ。


パンフレットに三谷幸喜さんのコメントがありました。山田さんと同級生で、その昔、ポランスキー映画を一緒に見た、という思い出がつづられていました。そして、自分がこの作品にかかわれていないことを非常に残念がっていた。いいんです、あなたは違う作品でみんなを喜ばせてください。でも、三谷=山田コンビもまた見たいな。


大満足の境地で帰りの電車で吊り革つかまってパンフを読もうとしたら、目の前の座席の人が同じパンフ読んでた。あわてて引っ込めてしまいました(笑)。

クロロック伯爵 山口祐一郎
アプロンシウス教授 市村正親
助手・アルフレート 泉見洋平
サラ 剣持たまき
ヘルベルト 吉野圭吾
せむし男・クーコル 駒田一
宿屋の亭主・シャガール 佐藤正宏
シャガールの女房 阿知波悟美
女中・マグダ 宮本裕子
演出 山田和也
指揮 西野淳