神経症患者*1と精神科医のおもしろ対談/「香山リカのきょうの不健康」

【香山】 どんな症状ですか?
【高橋】 あのころ、けっこうひどかったですね。ミカ・バンドのころだったけれども、目が見えなくなったりするんです。それでドームに入っちゃったような−−−話していると、またなりそうだな(笑)。
 要するに、すごい強迫観念があって、おきまりの、身体中いろいろなところが悪いような気がして、いろいろな病院に行って全部検査して、どこも悪くない。それでも、「絶対どこか悪い」と言って医学書を読みあさり、最後は脳腫瘍だと思って、それも全然何ともなくて。
 何で治ったのか、とにかくしばらくの間、完治したんですよ。


精神科医香山リカが、3人の神経症患者からそれぞれの病気について聞き出した本。その患者というのが、鈴木慶一高橋幸宏大槻ケンヂという有名人であるところが異色です。


鈴木慶一のことはあまりよく知らないのですが、大槻ケンヂはテレビで見ていて「この人あぶないなあ」と思ったことがあります。言ってることがかなり怪しい人のそれで、一時期小説を書いていたから、それで少しは発散されるのかと思ったら、この本を読むとそうでもなかったらしい。


ところで、冒頭のやりとりは、高橋幸宏が十九歳のころの症状について語った部分。ユキヒロが神経症だという話は聞いたことがあったけれど、具体的にどんな感じなのかについては知らなかったので、そんなに重症だったんだと知ってびっくり。とても、キリンラガーのCMでヅラかぶっている人とは思えない(笑)。


最後に、香山リカが自分自身について分析を試みているところが、この本の圧巻。彼女は「目に見えるような神経症の症状は何ももっていない」そうですが、過去のトラウマから虫が嫌いで、それについて精神科医の視点から考察を加えている。編集者との対談形式になっているんですが、話している内容が専門的でちっともわからない。でも、なんだか面白い。


「私は人類の幸福のために生きたい」と考えていた少女時代から、サバンナでピューマが鹿を食い殺す映像があるようなアフリカのドキュメンタリーを見て挫折。「決まりきった気象や天体観測をしてデータをどこかに送るような生活をしたい」から理学部を目指し、それも失敗して医学部に合格。ある意味波乱の人生について、語り倒してくれています。


なんとなく自分の知り合いに似ていて、その人を頭に思い浮かべながら読んでしまいました。


この本が発売されたのは1996年6月。対談そのものは、1994年末から1995年半ばにかけて行われました。それから10年以上がたちます。この4人が、いまどんな精神状態なのか、ちょっと気になるところではあります。


香山リカのきょうの不健康

香山リカのきょうの不健康