冷たさと優しさと/「戦場の黄色いタンポポ」橋田信介

久しぶりに日本語の本を読んでいる。著者は、今年イラク武装集団に襲撃されて亡くなった、戦場ジャーナリスト橋田信介さん。11年前に出版された本を文庫化したもののようだ。


戦場ジャーナリストとは、ある意味不思議な人種だ。平和の中にいると何か漠然とした不安を感じ、戦場で生死を行ったり来たりすることで生きている実感を持つ。当然のことながら自分の知り合いにそんな人はいないので、本の中でしかその生き様を知ることはできないのだが、その考えは納得できる。もちろん、自分は怖くてやれないけれど。


この本は、ベトナムカンボジアミャンマーといった外国の戦場で、橋田さんが出会った人たちについて綴ったものである。その視点はとても優しい。そんな橋田さんは、嘘でもなんでもついて戦場に入り込み、独自の情報網を駆使してスクープをもぎとり、それをメディアに売って生活する。その一見矛盾しているようで矛盾してはいない生き様が、なんだか自分と少しかぶるような気がして、ついつい読み進んでしまう。


冷たさと優しさ。たぶん、自分の中では同じ源を持っている要素だ。


戦場の黄色いタンポポ (新潮文庫)

戦場の黄色いタンポポ (新潮文庫)