「礎」/ダンダンブエノ

ダンダンブエノとは、近藤芳正が率いる演劇ユニット。山西惇、酒井敏也の三人が固定メンバー。年1回、なんらかの形で公演を行っているらしい。


そもそもは、近藤さんが好きなのだ。三谷幸喜東京サンシャインボーイズに出演している頃は知らないが、その後の三谷作品でしばしば出演。重要な役をこなす。決定的だったのは、三谷舞台の最高峰と言われる「笑の大学」での座付作家・椿一の熱演。それ以来、なんとなくファンである。熱烈というわけではなく、なんとなくというのがポイント。


他の二人はまったく知らなかった。どうやら、酒井さんはつかこうへいさん関係で活躍していたらしいが、「踊るさんま御殿」にも出演しているらしい。山西さんは、生瀬さんの劇団そとばこまち出身。NODA・MAPにも出演したことがあるとか。経歴を見ると、二人ともなかなかの実力派だ。


今回の公演は、この3人に加えて、オセロの松嶋尚美が参加。最近、主演映画が公開されたり、大河ドラマに出演したりと、ずいぶん役者づいている。もともとオセロの二人なら黒ではなく白、つまり中島ではなく松嶋ファンだったので、今回の舞台は願ったりかなったりだ。



舞台は、青山円形劇場。これが本当に円形なのである。真ん中に舞台があって、それを取り囲むように客席が配されている。キャパは少なめ。ホームページを見ると、約150人〜376人が収容可能とか。どうやら椅子の配置が自由に変えられるようだ。ただ空間そのものが広くないので、どの席からも舞台が近い。たとえ一番後ろの席であっても、役者を間近に見ることができる。役者冥利に尽きる舞台と言えるが、そのぶん四方八方から見られるプレッシャーも大きいのではないか。今回は前から2列目での観劇となった。見る側としては、嬉しい限りの舞台だ。


ストーリーは、女優栗子(松嶋)・大学教授中森(酒井)夫妻を中心に、栗子のマネージャー目黒(近藤)、目黒の後輩でお金持ちの本郷(山西)が絡んで進んでいく。舞台のまんなかに大きめの四角い石が置いてあって、これが場面によってテーブルになったり、銅像の台座になったりする。「礎」というタイトルの通り、ここを基点にして話が展開していく。以下は演技についての感想。

  • 松嶋さんは、演技派とはいかないけれど、なんとなく漂う雰囲気が好きだ。大劇場では厳しいだろうが、これくらいの規模の劇場ではなかなか存在感があって良いのではないか。テレビや映画も要チェックか。
  • 酒井さんは、とてもナチュラルぼけキャラである。もういい年齢のはずだが、どこまでもお子様のような雰囲気があって、大学教授というにはちょっと威厳がなかった。他の作品ではどんな役をやっているのだろうか。
  • 山西さんは、声も大きく、体つきもしっかりしていて、体育会系の演技という印象。いってみれば、いかにも舞台の役者。動きやセリフ回しは機敏でよし。お金持ち役だが、どうもそうは見えなかった。
  • 近藤さんは、偉そうな役をやらせても、情けなさそうな役をやらせても、安心してみていられる。演出については、何か目新しいことがあるわけではなく、個人的にはやっぱり役者に専念した舞台をみたい。


倉持裕さんのホンは、シリアスあり、笑いありでよくできている。複数の伏線をからませながら話を進める書き方は、三谷君に似ているところもある。ペンギンプルペイルパイルズという劇団を主宰していて演出もするが、今回のように外部公演の依頼も多いようだ。他の作品も見てみたいと思った。


舞台以外では、パンフレットも良かった。ふだん東宝ミュージカルのごつごつしたパンフレットに慣れているせいか(笑)、すっきり手軽にまとまった、しかも「礎」を意識したであろう真四角のパンフレットには好感がもてた。内容についても、出演者と脚本家へのインタビューや、ダンダンブエノの歴史といったもので構成されていて、とても楽しめた。サイン入りポストカードも売っていたので、ついつい買ってしまう。まったくもってミーハーである。


ダンダンブエノの次回公演は、来年の同時期に行われる予定だとか。今度は山西さんが演出である。それまでに酒井、山西両氏の演技をおさらいして、こちらもぜひぜひ観に行きたいと思う。