自分の見せ方を心得た大スター/田村正和

あの舌ったらずな口調でスターの座を許されるのは、田村正和だけだろう。とても歌がうまいとは思えないけど、絶大な人気を誇るユーミン。二人は自分のなかでは、同じ位置付けだ。


「新・乾いて候 〜そなたも同じ野の花か」
内装が新しくなったばかりの新橋演舞場にて。


テレビでは現代劇、舞台では時代劇、それがポリシー。舞台はセリフ劇になるが、自分は舞台の人間ではないので、それは無理なのだと言う。その意見には賛成だ。テレビでは顔が間近に見えることで、セリフ回しを別にして存在感をアピールできる。しかし、舞台ではそうはいかないだろう。彼は、田村正和という存在の見せ方をしっかり心得ている。


バラエティーに出ることなく、トーク番組に出ることもない。ブラウン管のなかだけのスター田村正和の生姿を一度見てみておきたかった。


初めての登場シーン。舞台がやや暗転して、10人はいる敵が一人一人セリフを吐く。ためてためて、盛り上げて盛り上げて、観客は今か今かと待ちわびる。そしていよいよ後方で幕が開き、その中心に我らがマサカズ!そのさらに後ろからレーザービームが後光のように、客席に向かって差し込む!!ダダーン!!!


音楽を使いまくり。まるでテレビドラマのよう。場面転換では、必ず大音響でつなぎの音楽を流す。


正和の、正和による、正和のための舞台。モダンな大衆演劇の極み。何着も変わる着物。自分でデザインしているという。着流しがステキ。3幕目の大殺陣が最大のみどころ。一人斬るごとに、会場から拍手。美しい。本人曰く「着物が乱れぬ殺陣」なのだとか。


あまりにマサカズワールドが完成されていて、それが逆に滑稽に見えて、思わず笑いがこみあげてくることがある。しかし、いったん引き込まれると、どっぷり異次元へ。


全3幕。

  • 11:30-12:30 第1幕
  • 休憩30分
  • 1:00-2:00 第2幕
  • 休憩25分
  • 2:25-3:15 第3幕


席は2階の右端。舞台は近いが、右を向かないと観ることができない。花道は全体がよく見えた。そもそもは母親の誕生日が先月あって、そのお祝いで誘ったのだが、実は自分が見たかっただけという説もある。休憩が30分あるし、始まりが11:30で終わりが3:15ならば、途中で何か食べるのが妥当なところ。なので、三越で弁当を買って持っていった。おしゃべりするにもちょうどよい環境だ。


平淑恵、川野太郎金田龍之介北村和夫。名立たるメンバーが脇を固めているが、すべては田村正和の引き立て役にしかすぎない。そのなかで、悪役を演じていた千葉哲也がなかなか印象的だった。


マサカズは前回公演で「舞台はこれが最後」と言っていたらしいが、今回これが最後なのだろうか。ちなみに杉良太郎は今月で座長公演を引退する。