個人的にはお得感のある舞台/魔界転生


山田風太郎の原作は読んだことがないし、映画も観たことない。そんな自分が、新橋演舞場で「魔界転生」を観てきました。キャストがなんだか面白い。どう面白いかと言うと、演舞場に出たことがなさそうな人から、ベテランまでよりどりみどりという印象です。


それにしても、出演者が多いですね。なかでは、千葉哲也*1(牧野兵庫頭)と升毅*2徳川頼宣)に注目していました。まあまあだと思ったけど、彼ら以上に他のキャラがよく目立つので、ちょっと霞んでいたかも。あと、十兵衛一番弟子役の陰山泰*3さんは、お笑い役に徹して、いい味出してました。


女性陣では、馬渕英俚可(お品)と遠藤久美子(お銭)が、予想以上に良かった。というより、全然期待してなかったんで、「こいつら上手いじゃん!」とか思ってしまいました。それと比べると、藤谷美紀(お縫)はちょっと・・・。緊張してたんですかね。


天草四郎成宮寛貴は、演技はよかったと思うけど、声がかすれていました。カマ声でセリフを言ってると、ノドに負担がかかるのかな。それとも、あれも役作りの一環だったのか。ただ、そんな声でもふつうの役ではないので、そんなに違和感はなかったのが救い。


G2*4の演出は、回転する舞台の使い方がうまかった。セットが奥行きをもって回転する。なんと説明したらいいのか、楕円軌道を描くように動いていて、セットが奥にいたかと思うと、すごく手前までセリ出してくる感じ。すごく舞台上に勢いを感じる動きです。


それから、大きな舞台だからこそできることをめいっぱいやってましたね。遊び心も満載で。幽霊が成仏するのに、ワイヤー吊りしちゃうんですから(使いたかったんだろうなあ)。セリフにも小ネタを挟みつつ、ときどきそれはオヤジギャグやん!と思うようなものまで俳優に言わせてました。


舞台はなんといっても柳生兵庫守・中村橋之助。のんべんだらりとしたキャラを淡々と演じながら、戦うときは立っているだけで演舞場の空気を巻き込むようなオーラ。最後、ツケ打ちの音が鳴り響くなかで根来衆相手に大立ち回り。何人斬ればよいのやらというくらい長い殺陣で、痛快爽快。見栄を切るシーンでは思わず「よっ、中村屋!」と言いたくなるも、まわりは静かなのでじっと我慢の子。橋之助の姿を見て、ひさしぶりに歌舞伎を見たいなあ、ととっても思いました。


なんでこの舞台を観ることになったかといえば、偶然見ず知らずの人からチケットを譲り受けたからなのです。歌舞伎座の近くのお店で食事をしているとき、隣の部屋では40〜60歳くらいの男性が10人近く集まって宴会が催されていたんですが、宴が終了すると幹事らしき人がやってきて「ご迷惑をおかけしました」といってチケットを置いていってくれたんです。たいしてうるさくもなかったのに(笑)。そんなことってあるんですねえ。他のお客さんにもあげていたので、たぶん松竹関係の人だったんでしょう。


というわけで、とってもお得感のある舞台でした(笑)。

*1:舞台「新・乾いて候」で、いい役者さんだと思いました(感想はこちら)。古畑任三郎ファイナルでも、藤原竜也に殺される兄役を好演してました。

*2:やっぱり升さんは、自分にとっては永遠の「梶浦圭吾」です。

*3:「ハゲレット」「Myth」に続いて、3回目の舞台。今年一番顔を合わせている役者さんかも。3枚目の役もしっかりできるのがいいです。それぞれの感想はこちら(ハゲレット感想Myth感想

*4:「女中たち」以来(感想はこちら)。もっといろいろ見てみたいんですけど、人気があってチケットがなかなか取れない。