夜のおともに、きまコン/「気まぐれコンセプト クロニクル」ホイチョイ・プロダクションズ


気まぐれコンセプト*1の単行本が出ていると知ったときの驚きは、かなりのものでした。ホイチョイは、もう出版するつもりはないのだろうと思っていたから・・・。


気まぐれコンセプト クロニクル

気まぐれコンセプト クロニクル


めぞん一刻」読みたさにビッグコミックスピリッツを買っていた、あの感受性豊かな高校時代。そこに載っていた、毎週見開き2ページの4コマ。広告代理店を舞台にしたそのマンガは、時事風俗にすごく敏感で、とても軽い内容で、時に下ネタもあって、まさに読み捨てるのにピッタリ。娯楽そのものでした。


時事風俗は、すぐに古びてしまう。だからこそ、これまで単行本化するのは難しいのだろうと思っていました。実際には、かなり前に1度単行本になっていたらしいのですが、23年ぶりに出版された今回の本は「クロニクル」と名づけるだけあって、976ページという超絶的な厚さの年代記になっています。買って電車に乗って立ち読みしようとしたら、腕がちぎれるかと思いました。


たまに見覚えのあるネタに遭遇することがあって、なんだかその時代にタイムスリップしたような気分。年代別に編集してあるから、何年の出来事かすぐにわかるし、いまとなっては意味不明なネタについてはときどき簡単な注釈もついている。毎日寝る前に2〜3ページ読んで、クスクス笑ったり、昔を懐かしがったりしています。


多少分野に偏りはあるにせよ、現代風俗を記録に残した、一級の資料になるんじゃないでしょうか。もちろん、ホイチョイはそんなつもりで書いてきたんじゃないでしょうが。


それにしても、ホイチョイプロダクションズって何者なんでしょう。漫画家? 映画制作集団? 広告屋? 自分の中では、いつまでも謎のままです。

*1:「気まぐれ」と漢字混じりにするのが正しいんですね。最初は「きまぐれ」と平仮名にしてました。

再生なき再結成


ふだんは買わないビール350mlの6缶パックなのですが、先日スーパーでついつい買ってしまいました。これまでは家で冷蔵庫にビールを置いておくとなんとなく飲んでしまうので、飲みたいときにだけ1〜2本買うようにしていたのです。


そんな自分が、今回なぜこの禁断の(?)6缶パックに手を出してしまったか。それは、彼らの顔がパッケージいっぱいに写っていたのが目に入ったからでした。


「ラガーハカワルナ。YMO


そう原因は、先月くらいからCMでたびたび目にするようになった、原始人やらちょんまげ姿をした細野晴臣坂本龍一高橋幸宏の偉大な3人組のせいです。


しかし、相変わらず馬鹿な格好をしてくれるところが、YMOYMOたる所以と言えるでしょうか。原始人もちょんまげ姿も、どっちも限りなくかっこ悪い。あまりの似合わなさに、意図的にこういう怪しげな雰囲気のものを選んだのかも、とさえ思えます。


それにしても、ライディーンっていい曲ですなあ。主メロもさることながら、ちょこまかと流れる裏メロを聞くと、ピアノを練習して弾いていたことを思い出します。自分にとっては、アルペジオと装飾音の美しき融合なんです。


ニューバージョンのライディーンは、ネット限定配信なんですね。早くしないと配信終了してしまうかな。手に入れるや否や。どうするべか。


ユキヒロはキリンラガーのCMに、サディスティックミカバンドに続いての出演です。1年前だから(こちらの日記を参照)、こんな短期間でまったく違った形で同じ商品のCMに出るというのも、なかなかないことではないでしょうか。

一夜といわず千夜復活してほしい。/「カノッサの屈辱」


去年の11月に逝去された仲谷昇さんですが、むかし1度だけ生で拝見したことがあります。池袋LOFTの特設会場で開かれた「カノッサの屈辱〜公開卒業式」がそれでした。生の仲谷さんは、番組のなかでの気難しそうな教授とはちょっと違って、気さくにトークしてくれていました。


その「カノッサの屈辱」が、スペシャル番組として帰ってきます。今回の教授役は、あの伊武雅刀さん。うーん、ステキです。伊武さんがどんな味付けをしてくれるのか。とーっても楽しみです。

1990年4月〜91年3月まで放送した伝説の番組「カノッサの屈辱」。かつてフジテレビの深夜バラエティで大人気を博し、フジテレビ深夜番組の黄金期を築いたこの番組が、来月2月5日(深夜1:08〜1:59)に、一夜限りの復活をすることになった。

あれから17年ですか。早いもんです。そりゃ、自分も老けるわけです(苦笑)。深夜番組が、とっても面白かったあの時代。1時間弱とはいえ、あのトキメキを再び味わえるといいなあ。やっぱりテーマ曲は、服部克久さんの「太陽」であること祈ります。大好きなんです、あの曲。「音楽畑5」のCDも買いましたもん。


ところで、番組のタイトルにはなんだかヘンな副題がついていますが、これは今週末から始まるホイチョイプロダクション製作の映画「バブルへGO!!タイムマシンはドラム式」とのタイアップ番組だからのようです。


実は、当時放送を見ているときは知らなかったのですが、この番組はホイチョイプロダクションが企画していたんですね。まあ、だったら好きなように宣伝に使ってくれても文句は言えないか。


ところで、このついでに調べていたら、「きまぐれコンセプト」がついに単行本になっていることを発見しました。なんと、ビッグコミックスピリッツ最長連載のあのマンガ、絶対に単行本にはならないと思っていたのに、それがついに発売されてしまったのです。・・・買わなきゃ。


気まぐれコンセプト クロニクル

一生下積むことが、ぼくの仕事なんですよ/「現場者」大杉漣


大杉漣さんといえば、北野武監督の「ソナチネ」のオーディションで、監督とほんの一瞬だけ顔を会わせただけなのに合格したというエピソードは知っていたけれど、いつから役者をやっていたのかとか、素顔はどんな人なのかとか、そういうのは全然知りませんでした。


おそらく「HANA-BI」でブルーリボン賞を受賞したときだと思いますが、大杉さんはこう挨拶したとか。「ピンクリボン賞とブルーリボン賞の両方を取ったことがあるのは、おそらく僕ぐらいのものでしょう」。ピンクリボン賞というのは、ピンク映画界で優秀だった作品や出演者に贈られる賞で、つまりはブルーリボン賞のパロディなんですが、それを堂々と公言する大杉さんの姿に、「この人好きかも!」って思ったのでした。


そして、たまたまオフィシャルサイト(http://www.renosugi.com/index.html)で受賞歴のところを眺めていたら、こんな記述を発見。

受賞歴

1984年 第5回ピンクリボン賞主演男優賞


・・・うわあ、この人オフィシャルサイトでも主張してる! いったいこれまでどんな俳優人生を送ってきたのだろう。俳優・大杉漣に、俄然興味が沸いた瞬間でした。


この本は、大杉さんのこれまでが面白おかしく綴られています。転形劇場という劇団に所属して15年、その途中にピンク映画に出演、Vシネマやテレビドラマのちょい役を経て、40歳で北野監督作品との出会い、その後の超多忙生活に至るまで、ほんとに激動のドラマです。本人の一代記を映像でやってみてもかなり面白いはず。


ソナチネ」では、北野監督演じるヤクザの子分である片桐という役。映画のストーリーは東京編と沖縄編に分かれていて、片桐は東京編のみ出演の予定だったところに、こんなエピソードがあったそうです。

そのシーンの撮影が終わった後、北野監督がそばに来てポツリと言った。
「片桐、沖縄に行くことになるんだよなあ」
本当は、片桐は東京に残るという設定で、ぼくはその日で撮影が終了するはずだった。しかし、監督に「行くことになるんだよなあ」と言われると、不思議と「そうか、行くことになるんだ」という気になる。すぐに所属事務所に電話して、その後に入っていた仕事を調整してもらう。

監督がかなり大杉さんを気に入っていたことが伝わる話です。ここから俳優・大杉漣は本人が望むと望まざると、メジャーな存在への道を歩き始めたのでしょう。


ソナチネ」に出演するまでにもたくさんの映画に出ていた大杉さんですが、その撮影のときの裏話がたくさん出てきますが、これが全部面白くて、全部見たくなってしまいます。

  • 井筒和幸監督の「ガキ帝国」(1981年)で、低予算のため出番で4分間しかフィルムが残っていなくて、NGなしの1発勝負のアドリブ演技をかまして、スタッフの爆笑をとった
  • 周防正行監督の「変態家族・兄貴の嫁さん(お嫁さん日和)」(1984年)で、32歳なのに60歳くらいのおじいさんを演じた(しかもピンク映画なのに小津安二郎監督作品へのオマージュになっているらしい)
  • 竹中直人監督の「無能の人」(1991年)で古本屋の主人役、演ずることをあえて何もしないことの難しさを知った
  • 崔洋一監督の「犬、走る DOG RACE」(1998年)で、本当の廃液に漬けられて、死にそうになった


本当はもっともっとたくさんの映画の話が満載なのですが、とてもここでは書ききれません。なにしろ、出演作品はこの本が出版された2002年の時点で300以上なのだそうで、この本にだって収まりきれてないでしょう。


さらに、大注目の記述を見つけてしまいました。ひとりでニタニタしてしまうような話です。

「Har'G KEITELS」と書いて、ハージーカイテルズと読む。田口トモロヲくんとぼくのユニットの名前だ。トモロヲくんは大事な友人のひとり。『さわこの恋』(1990年、廣木隆一監督)という映画の現場で始めて出会ったのだが、お互いすでに顔は知っており、目があった瞬間から『ああ!』みたいな感じがあった。同じ類の人間であるにおいがしていたのかもしれない。すーっと、打ちとけあった。

田口トモロヲさんは、大杉さんと同じくらい興味のある俳優です。その2人が出演しているというので、「ラマン」という映画を観にいったことがあるんですが、そのときの監督がまさにこの廣木監督でした。

トモロヲくんは、普段はとても静かな男だ。よくいっしょにお酒を飲むが、おしゃべりなぼくが一方的にまくしたてて、彼は相槌を打つという状態がほとんど。

大杉さんがおしゃべりだというのはあまりイメージしていなかったんですが、この本を読んでいるとかなり遊び心満載の人であることが嫌というほどわかります。無口なトモロヲさんと、マシンガントークの漣さん。ぜひとも見てみたいツーショットです。


この本を通じて見えてくる大杉さんは、とにかくパワフルで、しかも役者馬鹿なんだと思います。仕事を選ぶこともなく、面白いと思った作品はどんなに忙しくても出演する。過労で2度ダウンしたことも書かれていますが、すぐに復活してまわりに迷惑をかけないようにする。ほんとに、好きなことをトコトンやり続けているという感じです。


自分も同じことができるかと言われたら、そこまで無茶な生活はできないとハナから白旗あげてしまいますが、それでも少しは近づけるように、どんなに仕事が忙しくても、多少はムチャしてそんな生活を続けてみて、結果として自分のキャパシティが広がっているといいなあ、と思いました。


現場者―300の顔をもつ男

現場者―300の顔をもつ男

え、それってどういうこと?/「出会いの先に」進藤晶子


ほとんど何も書かれていない一面白地の、いやちょっとクリーム色してるけど、一見すると表裏どっちから開ければ悩んでしまうような、とてもシンプルな装丁。右上隅にこっそりと申し訳程度に書いてある「出会いの先に」が、この本のタイトルなのです。


週刊アスキーに連載されている「進藤晶子の え、それってどういうこと?」という対談の、2000年12月〜2001年10月までに掲載された記事を再編集したものだそうだ。でも、本の発行日は2003年4月11日なので、1年半ばかしタイムラグがあります。なので、対談内容はちょっと古くなっているものもあるけれど、それを差し引いてもなかなか面白い。


対談相手は、庵野秀明坂本龍一桐野夏生古田敦也糸井重里阿川佐和子荒木経惟花村萬月、松永真、中村正人三谷幸喜浅利慶太西村由紀江多田琢といった豪華メンバー。最初の方は進藤さんが緊張していたのもあったらしく、ぎこちない雰囲気がするけれど、回を重ねるごとにインタビューがこなれてきて、彼女の自然な感じが前面に出てくる。それにつれて読みやすくて内容も面白くなってくる。アスキーということで、コンピューターに関する話をすることがあるんだけど、それよりも自由に話しているときの方が、断然いい。


そもそもは坂本教授と三谷さんが登場しているというので読んでみた本ですが、面白かったのは阿川さんとアラーキーと松永さんの回でした。とくに、阿川さんの対談がほのぼのしててとてもいいです。ふたりとも自然体キャラだから、なんだかその辺で四方山話をしている感じ。


この本を読んでいると、進藤さんは本当にいい人なのだなあ、と感じます。いまはアナウンサーの頃と比べてメディアへの露出が多いわけではないけど、「がっちりマンデー」みたいにまったく出ていないわけでもない*1。そして、テレビを見るかぎり相変わらずとっても自然体で、その笑顔は見ていて安心する。この本のなかでも、多くの人がそのことに触れています。


週刊アスキーの対談はまだ継続中で、始まってから6年が過ぎている計算。これまで登場した人はどれくらいの数になるんでしょう。じつは連載は読んだことないので、1度読んでみようかな。

*1:どうやらちょうどこの前の放送から産休に入ったらしいですね。

このマンガが映画化されるとは知らなかった/「自虐の詩」


「大奥」のところで、木村多江さんについて、「自虐の詩」の主人公幸江に似ていると書いてから、ネットで検索してみました。そしたらこんなのがヒット。


なんとこの秋、映画化されるんですね。知りませんでした。


主演はドキドキしたんですけど、やっぱり(?)木村多江さんじゃありませんでした。残念。しかし、堤監督はよく阿部寛とコンビを組みますね。よほどやりやすいんでしょうか。


予告編の中谷美紀によるちゃぶ台返しは、なかなかお上手。

なんだかいろいろ学びました/大奥


フジテレビの連続ドラマが映画化されてヒットを飛ばす・・・この図式がすっかり定着したみたいですが、去年の年末に公開された「大奥」もその一つでしょう。これまでのドラマ版はほとんど見てなかったんですが、映画は仲間由紀恵の主演ぶりを見てみたくて足を運びました。


豪華キャストと豪華セットと豪華衣装。それに尽きるって感じでした。


主演でもなんでもないけど、杉田かおるがよかった。女としての微妙に揺れる嫉妬心を巧みに表現していました。この人、バラエティタレントとしてはともかく、女優としてはやっぱりすごいんじゃないでしょうか。


高島礼子のイジメっぷりは文句なしです。ときどき極妻みたいに思えて困りましたが。松下由樹もほんのちょっとしか出演していないけど、いびりインパクトはありまくりでした。


あと井川遥はあまり期待してなかったんだけど、見ている最中に「おいおい、アキ様会いたさにそんな行動取るか?」って突っ込みたくなるぐらい、みごとなダメ女っぷり。


準主役の西岡秀俊ですが、微妙・・・。生島新五郎という役は、盛りをすぎた歌舞伎役者という設定でしたが、その意味ではとてもいい味出していました。それが狙いならすばらしい演技といえるんですが、なんというかスクリーン栄えしなさすぎ。娯楽映画なんだから、もちっと華がほしかったですね。


主演の仲間ちゃんですが、見る前から思っていたのは、「忙しすぎやしないかい?」ってこと。2006年の大河ドラマが終わったと思ったら、すぐそのあとにこの映画、そしてまた1月からは連続ドラマ・・・。疲れてたんじゃないですかね。大奥総取締というには、いまいち威厳が足りませんでした。そもそも、仲間ちゃんはなんでかわからないけど、まともなラブストーリーがいまいち似合わない。ん、ってことは、今回の役どころである真面目な性格という絵島の設定とかぶるのか。ふーん、それならそれで生島と同じくいい味出してたってことになるのか。うーん、だけど、ねえ(苦笑)。


高島礼子側メンバーに、なんだかよく見たことあるけどあれは誰?っていう人の顔が。眉毛薄くて、すごい不気味。これまた印象によく残っていたので帰ってから調べてみると、木村多江さんでした。いままで名前は見たことあるし、顔も見たことあるけど、初めて顔と名前が一致しました。「日本一不幸が板に付く女優」と呼ばれているそうで、顔立ちはキレイな人なんだけど、言われてみるとなんだか納得してしまう。誰かに似ているなあと思っていたら、業田良家のマンガ「自虐の詩」のヒロイン幸江に似てます。だから幸薄い顔と思えるのかもしれない(?)。


ところで、今回舞台となった「絵島生島事件」というのは初耳でした。日本史は得意な方だったけど、六代将軍家宣と七代将軍家継はトピックスが少ない時代で、ほとんど記憶にない。新井白石が正徳の治をやったのは覚えてたけど、間部詮房は名前すら知らなかった。ちなみに、生島新五郎って実際のところは流罪になっただけど、磔にはなっていないらしい。うーん、こんなことを調べていたら、歴史熱がちょっと頭をもたげてきた。


それにしてもこの映画、友情出演&特別出演が多すぎ・・・。


大奥 スペシャル・エディション [DVD]

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自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

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